認知症

認知症は、脳細胞の死滅や活動の低下によって、物忘れや理解力や判断力の低下など認知機能の障害が起きて、日常生活、社会生活が困難になる疾患です。
認知症を引き起こす原因、発症の過程によって「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」などに分類されます。
アルツハイマー型認知症
頻度が最も多く、全体の半数以上ともいわれています。
脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、脳細胞が障害を受けます。これにより脳が萎縮して発症すると考えられています。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多いとされています。レビー小体という特殊なたんぱく質が脳内にたまることで脳細胞が障害され発症します。パーキンソン症状や幻視、頻尿や尿失禁、立ちくらみなどの自律神経症状、薬剤への過敏症など、みられる場合があります。
脳血管性認知症
脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)による、脳血管の詰まりや破れにより脳細胞がダメージを受けて発症します。
アルツハイマー型と同じく記憶障害などがみられますが、身体の麻痺や言語障害を伴うこともあります。 症状に対する自覚が強い場合は、気持ちの落ち込みや感情のコントロールがしにくくなることもあります。

診断、検査

診断は、問診と、必要に応じた検査のご提案により行います。検査には、シートを用いた認知症の診断テスト、画像検査があります。認知症の診断、治療には総合的な評価が必要となります。アルツハイマー型認知症を例にとると、通常、脳の側頭葉の海馬という部位が萎縮するのですが、物忘れの程度は強いのに画像上はそれほど萎縮は見られないケース、逆に、物忘れの程度は軽いのに画像上は萎縮が強い場合があります。
診断シート
MMSE:もっともポピュラーな認知症診断テストです。必要に応じて、下のような質問で構成されています。
日時の見当識(今日が何年、何月、何日か) ②場所の見当識(今現在の場所がどこなのか) ③3つの言葉を順番に復唱し暗記 ④計算問題(数字を使った計算) ⑤3つの言葉を思い出してもらう ⑥物品の名前 ⑦文章の復唱 ⑧検査者が伝えた内容の実行 ⑨検査者が伝えた通りの身体動作をしてもらう ⑩文章を書く ⑪図形の模写
画像検査
当院では、直接は画像検査をいたしておりません。近隣の画像診断専門の医療機関と連携をしておりますので、ご希望がありましたら、画像診断専門の医療機関をご紹介致します。画像診断の結果が出た後、治療は当クリニックで受けて頂くことも可能です。

治療

認知症の根本的な治療薬については、これまでも多くの治験がなされてきましたが、残念ながら未だ根本的な治療薬は開発されていません。しかし、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は薬で進行を遅らせたり、症状を軽くりできる場合もあります。薬物治療には主に抗認知症薬として、ドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬メマンチンが使われています。また行動・心理症状(BPSD)が著しいときには、抗精神病薬や気分安定薬、漢方薬等を検討します。ご本人様が飲み忘れをしやすく、周囲の方が服用をサポートすることが大切です。また、デイケア等を利用して、ご本人様が楽しく取り組める活動を取り入れ生活のリズムを保つことも、進行を遅らせる一助となり得ます。
※BPSDとは
BPSDは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったものです。暴言や暴力、興奮、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、抑うつ、もの取られ妄想、弄便、失禁などいずれもBPSDです。